「ひさご」北浜・菊壽堂義信の7月限定上生菓子
by 丸黄うりほ

①大阪・北浜にある和菓子店「菊壽堂義信」

②青ひょうたんをかたどった上生菓子「ひさご」

③自宅に連れて帰りました!

④上品で涼しげなひょうたん

⑤1個ずつ微妙に形が違うのが可愛い

⑥もったいなくて食べられない

⑦黄緑色の求肥に包まれた白餡
先週、「花形文化通信」の塚村編集長からこんなメールをもらいました。
「北浜の菊壽堂義信さんに〈氷ぜんざい〉をいただきに寄ったら、〈ひさご〉のお菓子が出てました!青ひょうたんの上生菓子です。1個から買えます」
なんですって?青ひょうたんの上生菓子!
そういえば、淀屋橋の鶴屋八幡さんに「成瓢(なりひさご)」という青ひょうたんの上生菓子があるのを以前から知っているのですが、10個以上の注文に限ると聞いていて、「何かイベントの時にでもまとめて注文できたら」と、塚村さんに話していたことがあったのでした。ところが、こちら菊壽堂義信さんの〈ひさご〉は1個から買えるとのこと。塚村さんに季節限定商品だと教えてもらい、私はさっそく北浜まで自転車を走らせました。
写真①をご覧ください。店先には看板も暖簾もありません。営業時間も平日のお昼間だけで、知らない人は和菓子店であることすら気づかないかもしれません。大阪の一等地・船場で天保年間から続く老舗でありながら、いや老舗だからこその佇まいです。
お店に入ると、四人がけのテーブルが三つ。ちょうど私が入った時は二つがうまっていて、女性のお客さんたちが〈宇治金時〉のかき氷や〈氷ぜんざい〉を楽しんでおられました。
こちらの名物といえば〈高麗餅〉ですが、ショーケースには並んでいませんでした。ケースの下の段には、梅干しをかたどったお菓子〈梅干し〉。そして、上の段には、漆塗りのお皿にのせられた生菓子が三種類並んでいました。そのうちの一つが、ひょうたん型をしていました!(写真②)
お菓子は抹茶とともにお店でいただくこともできるのですが、私のすぐ後にもお客さんが入って来られ、少し混んできたので、二つ買って持ち帰ることにしました。ご主人にたずねると、この上生菓子「ひさご」は、毎年7月だけ出されるそうです。あと数日のチャンスを逃すと、また来年までお預けということ。間に合ってよかった!
さて。こちらが持ち帰った小箱(写真③)。包みをあけると……。
薄い黄緑色のひょうたんが二つ、並んでいました!(写真④)
青みよりも黄みの強い、この緑色が上品ですね。ひょうたんのくびれは手でひねって作られているらしく、一つずつ微妙に形が違っていて、そこがまた良い!
これほど可愛いと、食べるのが本気で惜しい。
私は二つのひょうたんを一つずつお皿にのせて、さんざん眺め回してから、ようやくいただく決意をしました。(写真⑤⑥)
〈ひさご〉の黄緑色のところは求肥でした。なかには白餡が入っていて、ひょうたん型を割ると、まるで本物のひょうたんを割ったかのような配色です(写真⑦)。本物のひょうたんも、緑色の外皮を割るとなかには白いワタが詰まっているのです。
見た目と同じく、味わいもシンプルでさっぱりとしていました。夏にぴったりな、涼しげで、余計なものを加えない意匠と風味。
「さすがやなぁ」と、思わずため息がもれました。大阪の夏のお楽しみ。これからは毎年7月、忘れずにいただくことと、心のカレンダーに「◎」を書き込みました。
(1346日目∞ 7月24日)
※次回1347日目は奥田亮「でれろん暮らし」7月28日(月)にアップ。
1348日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、7月30日(水)にアップします。