超絶技巧ひょうたん工芸とひょうたん偉人

by 丸黄うりほ

①福井県福井市で開催された「第50回全日本愛瓢会 展示会」

②つるつるすべすべ肌の美瓢。愛知県・安倍勉さんの作品

③長さ2メートルを超える長瓢も多数展示されていました

④今年の「名誉総裁秋篠宮賞」は、埼玉県・中村久さんの作品

⑤いろいろな種類のひょうたんが使われています。兵庫県・團野義信さんの作品

⑥ミャクミャクとひょうたんのコラボ。岐阜県・竹内蘭さんの作品

⑦ひょうたんのお姫様?表情が可愛い。宮城県・鹿野牧子さんの作品

⑧ひょうたん偉人・湯浅浩史先生(左)と、森義夫先生(右) 

先週木曜日の「ひょうたん日記」では、6月12日と13日に開催された「第50回全日本愛瓢会  福井県福井市大会」の記念式典・展示会で、「ヒョータニスト・パーティ」の演奏会を行なったことを書きました。きょうは、その展示会に出展されていたひょうたん工芸作品を紹介していきますね!

写真①が展示会場のようすです。ホールを二つに区切って、半分に式典などを行う席、半分に展示コーナーが設けられました。ぎっしり並べられたひょうたんは、すべて会員作品。紐や房をつけない「素瓢」の部、紐や房をつけた「装飾瓢」の部、細工や塗りを施した「工芸瓢」の部と、3種類の部門に分けられています。

また、素材のひょうたんの大きさによって、高さ5センチ未満の「豆瓢」、5センチ〜25センチ未満の「小瓢」、胴回り100センチ未満の「中瓢」、100センチ以上の「大瓢」に分類。標準的なひょうたん型以外の大ひょうたんは「フリー巨瓢」、「長瓢」に分類されています。ホームセンターなどで「大ひょうたん」として売っているタネの実はだいたい高さ25センチ程度なので、この分類に従うと「小瓢」か「中瓢」になります。愛瓢会でいう「大瓢」が、いかに大きな実のことを指すか、わかっていただけますでしょうか?

というわけで、会場にはとにかく大きくて見事なひょうたんがずらり。どれも素晴らしくて甲乙つけがたいのですが、あくまで個人的に、すごいなぁ、すてきだなぁと感じた作品を、いくつかピックアップしていこうと思います。

まずは写真②をご覧ください。座布団に座った巨大なカップル美瓢は、愛知県の安倍勉さんの作品です。ひょうたんの肌にはシミひとつなく、つるつるすべすべ。形も整っていて完璧。こちらは「内閣総理大臣賞」を受賞されました。

写真③は長瓢のコーナー。どれも2メートルか、それ以上あります。育てるのは大変だったでしょうね。こうやって並ぶと圧巻です。

写真④は、最高賞の「名誉総裁秋篠宮賞」に輝いた、埼玉県の中村久さんの作品です。添えられたコメントを読んでみると……。

「完成まで9ヶ月かかりました。厚さ2㎝もあるひょうたんを削って、彫りの深さで灯りを調整し、絵柄を表現します。作業は日中カーテンを閉じて、ひょうたんの中にLED電球を灯し、濃淡を確認しながら中腰で長時間作業をするのでかなり負担がかかります。牡丹と蝶は彫り上げてから超音波カッターで切り取り、立体感が出るように、浮かしてはめ込みます。」

厚さ2センチのひょうたん。そして、恐ろしく根気のいる作業。まさに最高賞にふさわしい見事な作品です。

続いて写真⑤をご覧ください。会場の入り口近くに展示されていたひょうたんインスタレーションです。鹿威し(ししおどし)のある庭を、ひょうたんで表現したもののようですね。長瓢、鶴首、いぼ瓢、豆瓢、ロングハンドルディッパーなど、さまざまな種類のひょうたんが見えます。一体何個のひょうたんが使われているのでしょうか?こちらは兵庫県の團野義信さんの作品で、「福井新聞社賞」を受賞されました。

写真⑥は、大阪・関西万博のマスコット、ミャクミャクをひょうたんで表現。作者は、岐阜県の竹内蘭さんです。竹内さんといえば、いつもトレードマークのひょうたんを頭に被って現れる「ひょうたんマダム」。愛瓢会の人気者である竹内さんが、万博の人気者ミャクミャクをモチーフに作品を作られたのは、ぴったりとしか言いようがありません。この作品を被って(!)、実際に万博に行き、その姿が万博公式カメラにも撮影されたそうです。

竹内さんは、大阪・関西万博の公式ライセンス商品として、オーナメントの「ひょうたんミャクミャク」も製作されています。こちらについてはまた日を改めて紹介しますね。

さて、今回展示されていたたくさんの作品の中で、私の胸を最もきゅんきゅんさせたのが、写真⑦。宮城県の鹿野牧子さんの作品です。中ぐらいのひょうたんを数個組み合わせて作った、ひょうたんのお姫様?夢見るような表情が、たまらない。繊細な色調もとてもいい感じです。

会場には、これらひょうたん工芸の作者をはじめ、名だたるひょうたん名人やひょうたん偉人がたくさん詰めかけておられました。なかでも『ひょうたん・へちま  栽培から加工まで』(家の光協会)の著者である森義夫先生にご挨拶させていただくことができ、さらには敬愛する植物学者の湯浅浩史先生にも再会できて、私はもう天にものぼるような気持ちに。

日本のひょうたん第一人者と日本中の愛好者が一堂に会する、このような機会は「全日本愛瓢会」の会合以外にはありえないですね。

さて。来年予定の「第51回大会」は、京都府南丹市で開催されることが決まったそうです。すでに一年後が楽しみでなりません。

(1340日目∞ 7月9日)