壁にひょうたんあり!(その2)
by 丸黄うりほ

①谷町筋沿いのビル。「スタバ」で一休みしようとした時……

②ええっ? 壁にひょうたんあり?

③存在感と威厳を感じる16ひょうたん

④このお皿の意匠も16ひょうたん
先週に続いて、きょうも大阪市内で見つけた「壁にひょうたん」な物件を紹介します。
3月、ひょうたんグルメ班で空掘商店街界隈を探索したコンさんと私は、ランチから夕食までの間に3軒もハシゴして、ちょっと食べすぎました。そんなわけで腹ごなしにもう少し歩こうということに。それならと私が提案したのが、谷町筋を北へ向かって歩くコース。じつは、そこにコンさんにぜひ見てもらいたいひょうたん物件があったのです。
私がその物件に初めて気づいたのは、昨年10月でした。マンションの隣の部屋に住む、お友達のデザイナーIさんと自転車で天王寺まで行き、夕暮れ時の通天閣や四天王寺あたりの坂の風情に感じ入ってから台湾料理を食べて帰ってきた夜のこと。
楽しかったその日、帰りに谷町二丁目あたりでコーヒーでも飲もうかということになり、谷町筋沿いの「スターバックス」のテラス席に座った時でした。
ガーガーガー!!! ピーピーピー!!!
なんだなんだ、どうしたんだ??? その時、私のひょうたんアイがけたたましい音を立てて激しく反応したのです。
「ひ、ひょうたんがあるっっ!!」と、取り乱す私に、Iさんは「どこに?」とキョトンとしています。
「目の前の壁に!!」と、その方向を指差しつつ、私はほとんど叫んでいました。
そのビルには、「スターバックス」のほかにレストランウェディングで有名なフレンチのお店も入っていて、私は最初、そのレストランのマークかと思いました。ですが、近づいてよくみると違います。
ひょうたんは、ビルの壁に刻まれ、照明が当てられて、重厚な存在感と威厳をかもし出していました。
口部を中心とし、円形に集められたひょうたんの紋章では、縁起の良い印として6ひょうたん(六瓢=無病息災)のものをよく見かけますが、このひょうたんはもっとたくさんありました。数えてみると16。ひょうたんの真ん中には錨。「NS」という文字も刻まれていました。
そうなのです、このひょうたんがあったのは、「NSビル」という名のビルでした。大阪府庁が近いこともあって、特許や金融などいろいろな会社や事務所が入っているようでしたが、最上階の「浪速産業株式会社」のイニシャルが「NS」。後日調べてみると、不動産賃貸業「浪速産業株式会社」のウェブサイトが見つかり、ロゴがビルの表示板の「NS」と同じ書体でしたので、このビルが「浪速産業株式会社」または関連会社のものであることは確実だと思いました。
しかし、サイトのどこを見てもひょうたんは出てきません。おそらく、ビルが大阪城の西側にあるので、豊臣秀吉の馬印・千成ひょうたんからきているのではないか。なにか、もっと確実なことがわかればいいのだけれど……。
そう思ったまま、「ひょうたん日記」に書くこともできず、年を越してしまったのでした。
コンさんは、「壁にひょうたんあり!(その1)」で紹介した天下茶屋のひょうたんと、このひょうたんを比べて、「建物が対照的な感じですね」と言っていました。まさに、その通りなのですが、どちらもいいひょうたんですよね。
そういえば、3月の同じ日に古道具店「ひさご」で見つけた、古い印判のお皿も16ひょうたんでした。なんとなく優雅な感じがするのは、十六葉菊花紋を彷彿とさせるからかもしれません。
(1319日目∞ 5月21日)