妙心寺退蔵院のひょうたんなまず(1)

by 丸黄うりほ 

▲国宝・瓢鮎図(模本)。ラフな感じに立てかけてありました。

 

▲近寄ってみると……。か、可愛い!

 

「国宝・瓢鮎図」が見たくて、京都妙心寺の塔頭の一つである退蔵院に行ってきました。本物の「瓢鮎図」は京都国立博物館に寄託されていて、退蔵院にあるのは模本だそうですが、それでも見たい。ネットで調べてみると、いろいろな「ひょうたんなまず」グッズも売っているようで、それも欲しいし。

妙心寺はとても大きな禅寺なのですが、わかりやすく道案内が出ていて、退蔵院はすぐに見つけることができました。山門には「国宝模本 瓢鮎図 如拙筆 退蔵院所蔵」と書かれています。私はもはや「瓢」という文字を見ただけで心拍数が上がる体質になっています。それをはっきりと自覚しつつ、拝観料を払って中へ。受付にひょうたんが置いてあり、ちょっと気になりましたが、きょうはそんなところで止まってはいられません。

順路に従って玄関をくぐると、いきなり方丈(本堂)。そして、そこに「瓢鮎図」はありました!

しかし、模本とはいえ、かなりラフな感じで立てかけてあります。いいんでしょうか、こんな置き方で。その前に座布団が何枚か置いてあり、靴を脱ぐところもあります。さあ、ここに上がって絵を見なさい。そしてよく考えてごらんなさい。……と言われているような気がしました。

「瓢鮎図」は教科書に載っているくらい有名な作品ですが、ちょっとだけ説明しておきますね。

この絵は、室町時代の将軍・足利義持が、如拙という禅僧の画家に描かせた水墨画です。「丸くてころころしたひょうたんで、ぬるぬるしたなまずを押さえることはできるか?」という禅の問いかけに、京都五山の高僧31人が答えた画賛が絵の上部に並んでいます。

そして、下には、ひょうたんを持った人物がなまずを押さえようとしているところが描かれています。近づいて見てみると、ものすごく可愛い。ひょうたんのフォルムも、なまずの広げたひれもたまらん可愛さです。何より可愛いのは、ひょうたんを持つ男の手つき。こんな怪しい持ち方では、ひょうたんは落ちてしまうでしょう。でも、わざとそういうふうに描いたのかもしれません。

とにかく不思議な絵で、わかるか、わからないかと問われるとわからない絵です。この絵から、「つかみどころがない」という意味の、「ひょうたんなまず」という言葉が生まれたのです。