彦根の街で見つけたひょうたんマーク(後編)
by 丸黄うりほ
昨日の続きです。「しる万」本店を出て、次に向かったのは今回のメインイベントの会場である「山の湯」です。
東京・高円寺で、インディーズやレアなレコード、サブカルチャー本などを取り扱う有名店であった「円盤」が、2024年の春に彦根に移転オープンしたという情報は、以前からつかんでいました。ところが、大阪から微妙に遠い、彦根という土地に足を運ぶ機会がなかなかなかったのです。
「しる万」から北西に、住宅街を通る一本道を10分ほど歩いたところに目的地は見つかりました!ぱっと見たところ、古い瓦造りの民家。玄関に敷き詰められたタイルに、元・銭湯の風情が残っています。(写真①)
靴を脱いで、ふかふかのスリッパに履き替えてなかに入ると、レコードやCDや古本や雑貨でぎっしり!それでいて、元・銭湯だということを思い出させる、風呂の説明や決まり事などの掲示板や、鏡や蛇口などはそのまま残されていて、いい感じにカオスです。もともとオタク気質の私は、すっかり我を忘れてしばしお買い物に没頭してしまいました。
はっきり言って、そのまま夕方のイベント開始までそこにいてレコード漁りをしていても私は全然大丈夫かもしれん、と思いました。しかし、ここは彦根。せっかくわざわざ彦根まで来たのだから、観光もしなければならない!と、我にかえり……。とはいっても彦根城は前に行ったことがあるし……。
「彦根はキャッスルロードが有名だけど、芹川の近くに古い町並みが保存されている地区があって、なかなかいいですよ」と、お店で出会った方がアドバイスしてくださったので、塚村さんと私はそろそろと町歩きに繰り出すことにしました。
塚村さんは彦根の旧メインストリート(?)「彦根銀座商店街」で洋服を買い、「菓心おおすが」で目当てのお菓子もゲット。レトロな街並みが楽しくてはしゃいでいたら、時間が経つのはあっという間です。
というわけで、いよいよひょうたん的に最大の目的地であった「千成亭」を目指すことに。
「千成亭」は、高級牛肉御三家の一つとして知られる「近江牛」の専門店で、彦根市内で牛肉の販売店や、しゃぶしゃぶやステーキが味わえる料亭などをたくさん経営している企業です。長浜市にも店舗があり、すべてのお店で「ひょうたん」をトレードマークとして掲げています。それはやはり豊臣秀吉の馬印からきていると以前調べて知っていたので、私はすっかり長浜城のある長浜市が本拠地だと思い込んでいたのですが、本社は彦根の平田にあるとのこと。
「山の湯」や「彦根銀座商店街」から最も近い店舗は、夢京橋キャッスルロードにある「千成亭 夢京橋店」でした。
じゃーん!写真②をご覧ください。こちらがお店の外観です。「千成亭」と書かれた看板には赤いひょうたんマークが……!(写真③)
お店の前には、黒い牛の銅像が備え付けられ、「おにくじ」というおみくじがたくさん結ばれていました。建物の二階には「心華房」というレストラン、一階には「牛丼専科」というカジュアルなお食事処が入っているようですが、この時間帯は閉まっていました。
一階の大部分は精肉店&お土産処になっていました。ガラスの自動扉には金色のひょうたんマーク(写真④)。中へ入ると正面奥に近江牛のショーケースがあり、見事な牛肉が整然と並んでいました。
そして、ショーケースの上にはもちろんひょうたんマーク(写真⑤)、さらに壁にもひょうたんマークが彫り込まれていました(写真⑥)。
精肉以外に「近江牛 牛すじカレー」や「肝煮」の瓶詰め(写真⑦)、餃子やコロッケの冷凍食品もありました。さらに、お肉柄のタオルやトートバッグなどのオリジナルグッズもありましたが、ひょうたんをデザインしたものは見当たりません。私は意を決して、お店の方に話しかけてみました。
「千成亭さんのひょうたんマークが大好きなんですが、ひょうたんのグッズは置いてないですか……?」
お店の方は「あらまあ、それはありがとうございます」と返事してくださいましたが、ひょうたんグッズは特に作られていないとのことでした。そのかわり、店内のひょうたんマークの撮影を許可してくださり、「千成亭」の各種パンフレットや彦根の街マップなどをたくさん手渡してくださいました。
私は、ひょうたんマークの「近江牛らーめん」と「しゃぶしゃぶ胡麻だれ」を購入して、お店の外へ出ました(写真⑧⑨)。
別のお店でお土産を買っていた塚村さんと再び落ち合い、大急ぎでキャッスルロードを南へ歩き、芹川沿いを少しだけ散策していると、みるみる日が暮れてきました。喫茶店が見つからなかったので、スーパー「平和堂」で暖かい紅茶を買って休憩し、時計をみると、間もなくイベント開始時間です。
私たちは「山の湯」に戻り、女湯に設えられたトークショーのマイクの前に席を確保。まず湯浅学さんと安田謙一さんが登場し、ふわーっとした感じでいつのまにか「新春放談♨」が始まりました。そこに細馬宏通さんも加わって、盛り上がってきたかな……?と思うと、もう午後9時。帰りの電車の時間にあわせて、後ろ髪を引かれつつおいとましました。
(1269日目∞ 1月16日)
※次回1270日目は奥田亮「でれろん暮らし」1月20日(月)にアップ。
1271日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、1月22日(水)にアップします。