縮緬いぼ瓢「ハドリアヌス」のいぼ。水浸けすると?
by 丸黄うりほ
11月14日の「ひょうたん日記」で、縮緬いぼ瓢「ハドリアヌス」の水浸けを開始したことをお伝えしました。その数日後、私はあることに気がついて、急に不安を感じ始めました……。
ひょうたんは水に浸けると、表皮が一枚ぺろりとむけます。なので、収穫時にちょっとしたキズやシミがあっても大丈夫。皮と一緒にむけてしまうので、つるつるとした真っ白のひょうたんに仕上がる。
しかし、それは表面がスムースな、普通のひょうたんの場合です。
縮緬いぼ瓢の場合はどうなるのだろう?軽い気持ちで水浸けにしてしまったけれど、もしかしたら皮がむけると、表面を覆っているいぼが一緒に取れてしまうのではないか……?
私は間違った処理をしたのではないか?急にそんな思いにとらわれて、私は縮緬いぼ瓢のタネを扱っている「福井シード」のネットストアを確認しました。そこには「水に浸けて処理します」と書かれています。「うん。これでいい。これでいいのだ……」と自分に言い聞かせつつも、正直なところずっと不安でした。
そんなこともあって、私はちょっと怖くなり、それから3週間ほど水浸け容器にふたをしたまま放置していました。
もうそろそろ手をつけねばなるまい……と、観念してふたを開けてみたのが12月8日のことです。
おそるおそるビニールの覆いを外した私は、思わず「げっ!」と叫びました。
写真①をご覧ください!なんじゃこの色は!
ひょうたんを水に浸けると、すさまじい悪臭が発生するということは以前から何度も書いてきました。悪臭とともに灰色のアクのようなものが浮いてくるのですが、今回のアクは黒に近い茶色です。その色からして凶悪な感じがすごい。
しかし、意外にも臭いは控えめでした。色はすごいけどアクも意外に薄くて、表面を取り去ってみると中の水はわりあいきれいです。
ひょうたんを入れた洗濯ネットごと、水から出して引き上げました(写真②)。キッチンに運び、シンクのなかでネットを開けてみるとこんな感じ(写真③)。
よかった!いぼはとれていません!
写真④をご覧ください。左が「ハドリアヌス4号」で、右が「ハドリアヌス2号」です。4個目に結実した「4号」は、千成と交雑してできた実。他の実とは違っていぼが少なく、少し小さめです。半分くらい表皮がむけているのがわかるでしょうか? 水に浸けるとこういう感じに皮がつるりとむけるのが、千成など他の品種のひょうたんなのです。
では、いぼいぼに覆われた実はどうなったかというと……。「2号」の写真を見ていただくとわかるように、口部に開けた穴の周りのいぼのないところは皮がむけています。いぼが密集している部分もところどころむけてはいますが、全体で見るとほぼ皮はむけていません。もしかしたらタワシなどでこするとむけるのかもしれませんが、強制的にむいていぼが取れてしまっては元も子もない。
というわけで、私はその日、それ以上表皮に手を加えるのをやめて、中身の振り出しに注力することに決めました。
前回ドリルで開けた穴を下向きにして、ぶんぶん振ると腐った果肉がどろりと出てきました(写真⑤)。
濁った水を流すと、タネがこんなにいっぱい!(写真⑥)
このタネを保存しておいて春になって土にまけば、おそらく苗が育つでしょう。「ちょっともったいないなぁ」と思いつつ、私は毎年捨ててしまうことにしています。ノウハウがわかれば一度保存してみてもいいのですが……。
中身を振り出したひょうたんは、全体を洗い流し、いったん水に戻しました。
それから13日後の12月21日。再び水から引き上げたのが、写真⑦です。「ハドリアヌス4号」の皮は、3/4くらいむけました。他の3個はあまり変わらない感じで、皮はくっついたまま。しかし、もうこれ以上むけなくても、べつに何も問題がないような気もします。
私は4個の実を三度水に浸けました(写真⑧)。水をかえるたびに臭気は薄まっていきます。もう少しで水浸けは完了するでしょう。今年中には次の行程、乾燥に入れそうです。
(1264日目∞ 12月25日)