戯瓢(けほん)踊を見たくて御坊まで[3]「御坊銘菓・有田屋の〈ひょうたん〉」

by 丸黄うりほ

①緑に囲まれた「小竹(しの)八幡神社」の拝殿

②神社前の道端で見かけた「紀州・ごぼう寺内町散策マップ」

③寺内町にある御菓子司「有田屋」

④店内には歴史を感じさせる製菓道具が

⑤お菓子はどれも普段づかいできる良心的な価格です

⑥目当ての「ひょうたん」はこちら!

⑦手作りなので一つ一つフォルムが違う

⑧シンプルで優しい「ぼうろ」系のお菓子です 

今週も和歌山県御坊市から、先週の続きをお届けします。

「小竹(しの)八幡神社」は、神功皇后(息長足姫命)と応神天皇(誉田別命)、小竹宮を主祭神とし、江戸時代の延宝年間には現在の地に鎮座していたそうです。「御坊祭」は、この「小竹八幡神社」の例大祭であり、祭礼当日に奉納される「戯瓢(けほん)踊」「雀踊」「奴踊」のうち、「戯瓢踊」は和歌山県無形文化財の第一号に指定され、国の記録選択無形民俗文化財にもなっています。

しかし、「戯瓢踊」は神社の境内ではなく、寺内町の中心部にある「本願寺日高別院」で執り行われ、開始は午後3時半ごろから。あと2時間ほどあります。私はひょうたんマークの氏子組である「紀小竹組」の「小竹八幡神社」への到着時刻がわからないうえに、寺内町の広さもよくわからず、移動している間に行き違いになる可能性もあると思い、どうしたらいいものか少し悩みました。

が、ひとまず寺内町の「日高別院」のほうへ行ってみることに決めました。今回のもう一つの目当てである御菓子司「有田屋」も、ちょうど同じ方向にあります。

私は北へ歩いて川を渡り、東へ折れて、松原通りから中町と呼ばれるところまで来ました。寺内町は古い病院や薬局、造り酒屋、豪邸の古民家が多く、歴史を感じさせる街並み。この街をゆっくりと散策するだけで、たっぷり一日楽しめそうです。

10分か15分ほど歩くと、中町の通りを少し東に入ったところに御菓子司「有田屋」が見つかりました!

「有田屋」の建物も周囲と同じく、じつに風情のある佇まい。お店の中には、どっしりとした古い製菓道具なども置いてありました。戸棚や木の箱に並べられたお菓子は、季節の生菓子やおまんじゅうのほか、米粉のシフォンケーキ、煎餅、ぼうろ、吹き寄せなど焼き菓子まで。どれもシンプルで派手な飾りはないけれど、とてもおいしそう。しかも良心的な価格です。

そのなかに、目当てのお菓子「ひょうたん」も並んでいました!

お店の方は人当たりの良い、素敵な女性で、「有田屋」がもともとは江戸時代創業の薬店であったこと、その後お菓子を扱うようになったことなどを話してくださいました。私は「ひょうたん」を自分用とプレゼント用に合計10袋ほども買ってしまったのですが、持ち帰る途中で割れないように、緩衝材のプチプチをたくさん入れてくださいました。

「ひょうたん」は、いわゆる「ぼうろ」系の焼き菓子で、玉子の風味と優しい甘さが子どもからお年寄りまで誰にでも好まれそうです。特筆すべきは、そのひょうたん型が、ぜんぶ違うこと。型抜きではなく、一つ一つ絞り出して作っているので、いろいろな形があるのです。

おいしいし、可愛い。その時は10袋は買いすぎかなと思いましたが、日持ちもするので、後になってもっと買えばよかったと思いました。通販などもされていないので、御坊に行かないと入手できません。寺内町ももっとゆっくり見て回りたいし、私は「ひょうたん」を自宅で味わいながら、また足を運ばねばなるまい!という思いを強くしました。

(1255日目∞ 12月4日)

*続きます

  • 丸黄うりほ ∞ ライター・編集者。ひょうたんをタネから育て、その実から音の出るものを自作し、演奏する楽団「ヒョウタン総合研究所」立ち上げ所員。ソロで「オール電化ひょうたん」としても活動中。ひょうたん栽培歴は15年ほどになるが、畑がないので毎年マンション(大阪市北区)のベランダでプランター栽培している。「花形文化通信」では、ほかにインタビュー記事を担当。
  • 2024年度ヒョータニスト(ひょうたん栽培&加工に挑戦中のみなさん)
  • フェイ・ターンさん(瓢箪山)、ヤマミーさん(和泉市)、おーさきさん(小野市)、コンさん(吹田市)、イハリコさん(吹田市)、かよさん(瓢箪山)、杉浦こずえさん(大阪市/安城市)、たみさん(守口市)、中野由紀昌さん(福岡市)、西山朝子さん(大阪市)、塚村編集長、KFさん(東大阪市)、ともきちさん(田辺市)、ヒロミさん&ヤブタさん(淡路島)