戯瓢(けほん)踊を見たくて御坊まで[2]「紀州鉄道で小竹八幡へ」
by 丸黄うりほ
昨日の続きです。私はJR御坊駅の近くで昼食をすませて、JRの駅構内にある紀州鉄道の御坊駅へと向かいました。
紀州鉄道は、運行距離2.7キロ、平均時速20キロ。南北に細長い御坊の町の、5つの駅をゆるーく結ぶ鉄道で、「日本一のミニ鉄道」とか「日本一短いローカル私鉄」などと呼ばれることもあるそう。一両だけの車両はディーゼルカーで、窓には可愛いカーテンがかかり、支払いは現金のみ。こんなレトロな機関車がまだ残っているなんて♡
御坊駅から終点の西御坊駅までは約8分。あっという間に着きました。もちろん無人駅で、駅舎もとても古い。なんとも不思議な、小さな旅気分です。(写真①②)
地図を頼りに、南へ向かって歩き出すと、かすかな笛の音が聞こえてきました。次なる目的地「小竹(しの)八幡神社」への道はこちらで間違いなさそうです。落ち着いた、風情のある街並みが続きます。この辺りから東側は「寺内町」と呼ばれるエリアで、御坊市の旧市街地に当たるそうです。
……と、道脇にベビーカステラやたこ焼きなどの露店が並び始めました。耳に聞こえる笛や太鼓の音も、どんどん大きくなってきます。神社の鳥居前には、お揃いの祭礼装束を着た人がいっぱい集まっています。その向こうには、赤い神輿も見えました!(写真③)
「御坊祭」の主催となる「小竹(しの)八幡神社」の鳥居近くにはたくさんのちょうちんがぶら下がっていました。その一つをよく見ると、ひょうたんマークです!赤いひょうたんに、「紀小竹」の文字。(写真④)
神社の境内に足を踏み入れると、大きなノボリが何本も、空に向かってそびえていました(写真⑤)。ノボリは竹に付けてあるのですが、その高さたるや。男性が数人がかりで支えても、ときおり吹く風に煽られて足元がぐらつくほど。しかし、その黒い文字の書体といい、デザインといい、なんというかっこよさでしょう!
ノボリの奥には、赤い傘がいくつも立て掛けられていました。どの傘にもマークがついています。そのうちの一つにも、ひょうたんマークがあり、傘の根元には、さきほどのちょうちんと同じく「紀小竹」と書かれていました。(写真⑥⑦⑧)
あとで調べてみると、この傘は「傘鉾」といい、「御坊祭」の宵宮は「傘揃え式」と呼ばれることもあるのだそうです。ひょうたんなどのマークは、祭りに参加する氏子組の組印。「小竹八幡神社」の氏子組は10組あり、そのうち神振神事に参加するのは9組。組印には、ひょうたんの他に、盃、おたふく、雀、鳥居、扇子、鶴などがあり、それぞれの組の神輿や衣装にもその印がつけられていました。
9組の神事参加順はあらかじめ決められていて、その順にしたがって獅子舞や奴踊り、雀踊りなどを奉納するのだそうです。ひょうたんのマークをつけているのは、4組目の「紀小竹組」。御坊市の目ぬき通りである本町商店街を中心とした組だということです。
時計を見ると、午後1時くらい。その時間帯に「小竹八幡神社」の境内で多く見かけたのは、1組目「中組」の盃マーク。ひょうたんマークの「紀小竹組」が神事に参加するのは、まだ少し先の時間帯のようです。
(1253日目∞ 11月28日)
*続きます
※次回1254日目は奥田亮「でれろん暮らし」12月2日(月)にアップ。
1255日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、12月4日(水)にアップします。