戯瓢(けほん)踊を見たくて御坊まで[1]「ひょうたん印の薬局」

by 丸黄うりほ

①「御坊祭」の日、丸黄うりほはJR御坊駅にやって来ました

②駅から10分ほど歩いた県道沿いにある「ひょうたん印の薬局」

③二つのひょうたんが、紐で結ばれたトレードマーク

④心ときめく素敵なマークです

⑤薬局名の由来となった古いひょうたんが飾られていました 

先月、和歌山県御坊市の小竹(しの)八幡神社の例大祭「御坊祭」を見に行ってきました。「御坊祭」は御坊の町をあげて催されるとても大きな、大変有名なお祭なのですが、私の目当ては、そのなかで奉納される無形文化財「戯瓢(けほん)踊」です。10月4日の午後と5日の朝に行われるその踊りには、なんとひょうたんが登場するというのです。今年の春ごろ、私に最初にその情報をくださったのは、ヒョータニストのヤマミーさんでした。

「これは行かねば」ということになり、まずは「御坊 ひょうたん」でネットを検索してみると、「戯瓢踊」のほかに、「ひょうたん印の薬局」と、「有田屋」という御菓子司がヒットしました。

私は10月4日(宵宮)の朝に大阪市内の自宅を出て、JR紀州路快速ときのくに線を乗り継ぎ、お昼前にJR御坊駅に降り立ちました(写真①)。「戯瓢踊」が奉納されるのは、JR御坊駅から少し離れたエリアにある本願寺日高別院。奉納の時間まではまだ少し間があります。

というわけで、まずはJRの駅から10分ほど歩いたところにあるはずの、「ひょうたん印の薬局」を探してみることにしました。

当日は朝からパラパラと小雨の降る日でした。少し強まってきた雨の中、県道を西方向に歩いて行くと、紀州鉄道の踏切がありました。踏切を越えてさらに道なりにまっすぐ行くと目当ての薬局が見つかりました!(写真②)

薬局の建物の壁には、緑色と茶色のひょうたんマーク。ふたつ並んだひょうたんは、白い紐でつながっています。同じマークが駐車場の案内板にもありました。良い形のひょうたん、心ときめく素敵なマークです。(写真③④)

ガラス扉の中を覗くと、数人のお客さんが座っておられるのが見えました。こちらは処方箋を持っている人が訪れる調剤薬局で、一般薬を扱うドラッグストアではないようです。そのため少し躊躇したのですが、せっかく御坊まではるばる来たのだからと、私は勇気を出してドアをそっと押し、中に入らせてもらうことにしました。

奥の棚に、こちらの薬局の名前の由来となったという二つのひょうたんが、ガラスケースに入って並んでいるのが見えました。どちらも口部が長く、ウエストがきゅっとしまった美瓢で、大きさは20センチから25センチほど。焦げ茶色の表面はつやつやと光り、このひょうたんが大変古いもので、しかも大切に磨かれて伝えられてきたことがわかります。

ひょうたんの横には、この二つが収められていたという木箱と、木箱の蓋裏に綴られた文章も一緒に飾られていました。

私は、対応くださった薬剤師さんに、ネットでこのひょうたんを知ったこと。また、大阪から「御坊祭」を見るために訪れたことなどを話しました。そして、店頭には一般薬も少し並んでいたので、虫刺されの薬を買いました。

「ひょうたんが見たくて来た」という奇妙な客にも薬剤師さんたちは親切に接してくださいました。快く写真撮影も許可くださり、撮らせていただいたのが写真⑤です。

「ひょうたん印の薬局」のウェブサイトには、このひょうたんの写真とともに詳しい説明が出ています。

それによると、このひょうたんは2017年に和歌山県日高郡日高町比井の旧家で見つかったものだそうです。二つのひょうたんは紐で結ばれていました。蓋に書かれた漢文には、元の持ち主はこれを近江の彦根で入手。のちに、三韓(朝鮮半島)伝来の古いひょうたんだと鑑定されたことなどが書かれています。

この二つのひょうたんのように、「つながる」ことで人々の健康を支え、サポートしていきたい。その志から「ひょうたん印の薬局」という名前がつけられたのだそうです。とても素敵なエピソードですよね。

私は薬剤師さんたちにお礼を告げ、再びJR御坊駅に向かって、今度は東に歩き出しました。

(1252日目∞ 11月27日)

*明日に続きます