マダガスカルの音楽と聞くと、個人的にちょっと苦い思い出が

by 奥田亮

ヒョータニスト・パーティのメンバーと湯浅先生。(撮影:大船フラワーセンター万波恵さん)

気になった楽器ゾース(ウズべキスタン)。ネックもヒョウタン?

気になった楽器コラ。このコラのブリッジはどうなってんの? そして弦が太い!どんな音?

9月9日以来久しぶりの投稿になります。その間にお彼岸も過ぎて、さすがに朝晩は涼しくなってきましたが、まだまだ暑い日が続いておりますね。これが今後の標準になっていくのかもと思うとちょっとぞっとしますね。

さて、9月16日(月祝)は、鎌倉の大船にあります、「日比谷花壇大船フラワーセンター」で、ヒョータニスト・パーティの演奏会が開催されました。これは、9月6日から10月1日まで開催されている「ヒョウタン展」のポップアップイベントとして企画してくださった演奏会で、繋いでくださったのは「ヒョウタン展」の企画をされているヒョウタン研究の第一人者、植物学者の湯浅浩史先生。今年6月6日に全日本愛瓢会・愛知県知立市大会総会で演奏させていただいたのがご縁で実現したのでした。

関西からのメンバー3人と長野の私はそれぞれ車で前日入りし、まずはわざわざおいでくださった湯浅先生の解説でヒョウタン展を見せていただきました。ヒョウタン展はこの時期に毎年開催されているようで、4回目の今回のテーマは「楽器の原点〜世界のヒョウタン楽器と装飾」。百数十展におよぶ楽器は、ほとんどすべて、湯浅先生が現地で収集されたもの。ひょうたん製の楽器がこれほどの数と種類で一堂に会したことが今まであったのでしょうか。おそらく、みんぱくでも、楽器博物館でも実現していないのではないでしょうか(たぶん)。展示内容は「ひょうたん日記」で丸黄うりほさんが3回に分けて詳述してくださってますので、そちらをご覧ください。(1回目はこちらから

もっとも興味をひいたジェゾ(マダガスカル)。

ジェゾにもいろいろあるようです。

展示は楽器づくりの着想を得たり、構造を学んだりできる夢のようなコンテンツでしたが、とくに弦楽器に興味をひかれる私が、数多ある展示楽器の中でことさら惹きつけられたのが、マダガスカルの「ジェゾ」という楽器。棹に共鳴胴としてヒョウタンが取り付けられているのは、比較的一般的なリュート属の楽器といえそうですが、弦の響きを共鳴させる共鳴板あるいは共鳴膜のようなものがなく、ヒョウタンに付けられた溝に棹を差し込んで、棹の響きを直接ヒョウタンに共鳴させるのはあまり見ない構造のように思いました。フレットらしきものがあるので、きっとギターのように弾くんだと思いますが、弦のところがはっきり見えなかったのでよくわかりませんでした。さらに棹を支えるためなのか、ヒョウタンの口に別のヒョウタンなどを継ぎ足して棹に固定している構造もユニークです。

「ジェゾ」は会場に展示されているものだけでも、使われているヒョウタンの形や構造がそれぞれ微妙に違っていたりするので、たぶん現地では比較的一般的な楽器なのではないかと考えられますが、ネットで検索してみても見つけることができませんでした。あきらめていたら、塚村編集長がmadagascar traditional musical instrumentsと英語で検索したら見つかったよと、教えてくださったサイト( https://musicaparaver.org/instruments/origin/madagascar/2065)に、〈jejo〉という表記で紹介されていて、楽器の素材はHorn、Pumpkin、Woodとなっています。GourdではなくてPumpkinとなっているのは、たぶん間違いというより混同、あるいは同一視ということなのでしょうか。そして、ヒョウタンの口から伸びているのがHorn。確かに展示品の写真をよく見ると牛の角ですね。でも、ヒョウタンを継ぎ足したものもあるようなので、Hornは必須ではなさそうです。これはぜひ作ってみなくてはいけませんね。また宿題が増えました。

じつはヴァリハに着想を得た《瓢立琴 銘 剥き身》(左)、《瓢立琴 銘 電柱》(右)。

ところでマダガスカルの音楽と聞くと、個人的にちょっと苦い思い出がくっついてくるのです。今を去ること40数年前の高校3年生の時のことです。当時毎週欠かさず聞いていた小泉文夫がDJをつとめるNHK-FM「世界の民族音楽」のオンエアがちょうど試験の前日にあったのでした。さすがに受験の前日に音楽にうつつを抜かすのはどうかとは思いつつも、聴きたい欲求には抗えず、勉強しているフリをして音を小さくしたラジカセにかじりついてカセットテープに必死で録音したのが、マダガスカルの音楽特集だったのでした。その時聴いた竹の琴「ヴァリハ」の音楽は、それはそれは美しく、激しいリズムの音楽しかないのではないかと思っていたアフリカにこんな美しい音楽があるんだと耳から鱗が落ちたのでした。当然のことながら(?)試験の結果はからきしで、これで1年間の浪人が確定したのでした。(ヴァリハの演奏はこちらYouTubeへ

ただ、このヴァリハ・ショックは深く記憶刻まれて、その後長い時間を経てひょうたん楽器作りに生かされることになりました。長ひょうたんで作った自作楽器《瓢立琴》は、このヴァリハに着想を得た楽器なのでした。これがホントのひょうたんから駒、いや、駒からひょうたん? でれろん。

(1230日目∞ 9月30日)

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