大船フラワーセンターで、世界のひょうたん楽器に会う(その3)
by 丸黄うりほ
大船フラワーセンターで開催中の「ヒョウタン展」レポートの3日目です。(1日目はこちらから/2日目はこちら)
私たちは第一展示室を出て、第二展示室「フラワールーム」へ。途中の廊下には、写真①のような素敵なランプが備え付けられていました。細かいところまでひょうたん尽くしなのがうれしい。
入ってすぐに展示されていたのは、ブルキナファソの「バラフォン」です(写真②)。「バラフォン」は、ひょうたんがいくつもぶら下げられた木琴で、上部をカットしたひょうたんに蜘蛛の巣を張らせ、その震えを加えた音色が特徴。現在では蜘蛛の巣の代わりに薄紙が張られているそうですが、音に対する繊細なセンスを感じずにはいられません。今回展示されていたすべてのひょうたん楽器の中でも一番大きくて、「コラ」や「シタール」と並ぶひょうたん楽器の王者ともいうべき風格です。
「バラフォン」には、たくさんのひょうたんと木片が使われていますが、ひとつのひょうたんと一片の木で作られているのが、ザンビアの「イリンバ」です(写真③)。木片をゴム質の棒(マレット)などで叩くと、ひょうたんが増幅装置となって響くという構造。木片の種類や叩く棒の素材を変えてみると、いろんな音が出そうですね。
「体鳴楽器」に分類される楽器はじつに多彩です。写真④は「親指ピアノ」や「ハンドピアノ」とも呼ばれる楽器たちで、長さの違う金属棒を弾いて音を出します。金属の音を共鳴させるのにひょうたんが使われ、アフリカの多くの地域に分布し、「カリンバ」「サンザ」「ムビラ」などの名前で呼ばれています。
写真⑤はブルキナファソの「ワムデ」。半切りにしたひょうたんに、貝殻がたくさん付けられています。この貝が音を鳴らすのでしょうが、どのようにして演奏するのでしょうか。ひょうたんに描かれたアートも素敵。
写真⑥のケニアの「肩掛けカスタネット」は、ひょうたんの首のところだけを集めて作った楽器。ひょうたんとひょうたんの間にガラスのビーズが使われていて、肩にかけて踊るとリズミカルな音を立てるそうです。見た目も美しく、楽器としてもアクセサリーとしても使えそう。
写真⑦のマリの「ラカタク」は、少年の割礼儀式に使われる音具。皿状に切ったひょうたんをいくつか重ね、木の枝を通して打ち鳴らすそうです。
写真⑧はペルーの「ギロ」。ひょうたんの表面に筋を彫り、それを棒でこすって演奏します。写真⑨のパプアニューギニアの「ヤバ」は、「ギロ」とよく似ていますが表面に刻みがない。どうやって演奏するのかというと、びっくり。棒のほうに刻みがあり、その刻みをひょうたんの口部に突っ込んでこすって演奏するのだそうです。世界には本当に変わった楽器がたくさんあるのですね。
写真⑩は、コートジボワールの「ウォータードラム」。半割にした大きなひょうたんに水を張り、その上に少し小さなひょうたんを逆さまにして被せ、棒などで叩いて演奏します。
ひょうたんに皮を張って響かせる太鼓類は「膜鳴楽器」として、「体鳴楽器」とは区別されます。ブルキナファソの「ベンドレ」は、「話す太鼓」とも呼ばれ、その音がさまざまな伝達に使われたのだそう(写真⑪)。
展覧会を一巡すると、ひょうたん楽器には、儀式や伝達など楽器以上の意味や役割を持つものも多いのだということに気がつきます。また、こちらの展示室には秋元しゅうせい氏製作の「ひょうたんスピーカー」も展示されています。
音とは何か。音楽とは何か。ひょうたんと人類の文化的な結びつきについて、その始原に思いを巡らすきっかけとなりうる「ヒョウタン展」は、10月1日(火)まで。未見の方は、この週末にぜひお出かけください。
(1229日目∞ 9月27日)
※次回1230日目は奥田亮「でれろん暮らし」9月30日(月)にアップ。
1231日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、10月3日(木)にアップします。