もう逃れようがありません。
by 奥田亮
先週8月12日月曜は、山の日の振替休日でお休みをいただきました。去年の「でれろん暮らし」(160回)にも載せていますが、この8月12日というのは、毎年、私が住まいする長野県小布施町の中町という自治会の最大のイベント「お花市」と「ギヤマン祭り」が開催される日。「お花市」は、うちの2件隣にある「桜塚観音堂」で、盆花を配る例大祭。そしてそれに合わせてうちの前の通り「ギヤマン通り」で開かれるのが「ギヤマン祭り」です。
1週間前から通りには提灯がぶら下げられ、当日の朝から「地口灯籠」が飾られます。夕方から、通りは歩行者天国になって露店が並び、町内外のからの大勢の人たちで賑わいます。観音堂も盆花をもらおうとお参りに来る人で長い行列です。お祭りのメイン会場は、うちの前の「おぶせミュージアム・中島千波館」駐車場。仮設舞台が設営され、おやじバンドの轟音が夜まで響きわたります。ここまでお読みいただくとわかると思いますが、すべて “うちの前 ”。祭りのど真ん中にうちがあるのです。もう逃れようがありません。しかも小さな自治会の祭りなので準備から片付けまですべて自治会員の手弁当。いや〜大変です。
ということで、毎年わが本屋「スワロー亭」も、この日は営業時間を延長して夜間も開け、店にちゃぶ台を出して遊びに来た知人とビールなど飲んで過ごすことにしています。食べ物や飲み物は、差し入れがあったり、一歩出れば露店でいくらでも手に入ります。BGMは窓を閉めても聞こえてくるおやじバンドの定番ツェッペリンにディープパープル、クイーン、あるいはスピッツ、はたまたサザン。……まあいいか。
さて、そんなお花市に遊びに来てくれたMさんは、去年〈えせUFO〉の苗を育ててくれた方(162回参照)。〈えせUFO〉は順調過ぎる成長をして、蔓が隣の家の電線にまで駆け昇ってしまったりと大暴れ。結果洋梨型のひょうたんが19個もできて困っているというので、6個欲しいとお願いして持ってきてもらいました。ちょっと思いついたことがあったのです。せっかくなので六瓢で。
さっそく作り始めたのですが、途中まで作って、その楽器がどういう構造をしているのか、まるでわかってないということに気づいたのです。いや、さすがに最初に調べてから作れよと一人突っ込みしました。で、せっかく貼り合わせたところを無理やり剥がしたりと全く無駄な作業でせっかくの休みが終わってしまいました。続きはまた今度。YouTube先生に教えてもらってやり直しです。何ができ上がるかはお楽しみに。あ、ちなみに楽器です。
ところでこの洋梨型のひょうたん、フェイ・ターンさんからいただいたタネから苗を作り、うちでも同じような形の実ができたのですが、どうみてもUFOというよりIPUなんじゃないかと。形もさることながら、皮の分厚さがIPUだと思うのです。ただ、IPUにしては小ぶりですし、出てきたタネをみても、どうもIPUっぽくないので交雑していることは確かなようです。
ひょうたんは、音を共鳴させる天然の空洞を持っていることが、楽器の材料としての優位性だと思うのですが、それ以上に自分が惹かれるのは、定型を持たないことなのではないかと思います。同じ形のものはふたつとできませんし、〈えせUFO〉のように交雑して変テコなものができたりもします。この変テコさがアフォーダンス的に楽器作りに誘惑するんですね。逆に完璧に美しい、ひょうたんらしいひょうたんができたとしたら、楽器にする気が起きないかもしれませんね、でれろん。
(1213日目∞ 8月19日)