倍音で宇宙人を呼ぶという設定はちょっとスベりました

by 奥田亮

トゥバの民族衣装を着て演奏する葛目絢一さん。

《芳一》で宇宙人を呼んでみる。

先週の15日、海の日。祝日ということで連載はお休みさせていただいておりましたが、その日は長野県の南、山梨県との県境にある諏訪郡富士見町でホーメイの葛目絢一さんとのライブがありました。富士見町は標高1,000m前後、豊かな自然に囲まれた八ヶ岳山麓にありながら、東京からも近いこともあって、県外からの移住場所として注目され、人口が増えているホットスポットの一つ。シャッター街だった駅前商店街にできた新しいお店やカフェ、飲食店は若い人で賑わっているようです。ライブ会場も、東京から移住してきた店主が元々薬屋さんだったところをセルフリノベして作ったフリースペース。「埋め草」という名前もひねり技が効いています。店の奥に併設されている中古レコード店「切り株」もかなりディープ。時間があればじっくり見たかった。

さて、ライブはお互いのソロから始まり、最後に二人で一緒に演奏するという構成。まずは葛目さんが喉歌ホーメイやイギル、ブザーンチゥ、ショールなどのトゥバ共和国の楽器を演奏。草原を風が吹き抜けるような心地よい空気を作ってくれた後に私にバトンタッチしてくださいました。

そんな温かな空気が流れるステージ、まずは《芳一》の披露から始めてみました。倍音で宇宙人を呼ぶという設定はちょっとスベりましたが(笑)、気を取り直して楽器説明と演奏を交互に繰り返すというスタイルで進行。時々ループマシンで重ねた音楽らしき演奏を挟みつつ、持参したすべての楽器を紹介しました。

再び葛目さんが登場して二人の合奏タイム。まずは即興から始めましたが、これが結構楽しかった。まともに共演するのは今回が初めてだったのですが、楽器の相性もさることながら、葛目さんとは感覚的にも合いそうで、即興演奏が気持ちよくできたのはうれしかったのでした。そのあとアンコールを含めてトゥバの民謡を2曲一緒に演奏してライブは終了しました。

共演は楽し。(写真3点とも:中島敏子)

お客さんは当初の予約が4人。少々寂しいかなと思っていましたが、最終的に15人ほど集まってくださいました。一番前に陣取って動画を撮りながらノリノリで見ている大柄のアメリカ人は、聞けば縄文好きが高じてこのあたりに移住し、遺跡の案内などをしながら「縄文DJ」を名乗って活動するアーティスト。流暢な日本語で「黒曜石がね」なんていうのを聞くと、さすが八ヶ岳山麓!(編注:八ヶ岳周辺には縄文時代の黒曜石鉱山がある日本遺産ポータルサイトへ

今回のライブは、9月に葛目さんと共演するイベントに向けての地ならし的な意味合いもあったのですが、図らずもというか、予想通りというか、諏訪、富士見という場所のディープさを再認識する機会にもなりました。まだまだ楽しめそうです。葛目さんありがとうございました。でれろん!

1204日目∞ 7月22日

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