ひょうたん実る、瓢箪山稲荷神社の神饌畑
by 丸黄うりほ
大阪府東大阪市の瓢箪山稲荷神社といえば、この「ひょうたん日記」ではもうすっかりおなじみですよね。神社の参道にあたる商店街や、最寄駅である近鉄瓢箪山駅周辺には、ひょうたん型をしたオブジェやモニュメントがいっぱい。神社の手水舎や賽銭箱、ポスターや案内板にも、とにかくあちこちにひょうたんの図があしらわれ、地元のみなさんだけではなく、ひょうたん好きにとっても唯一無二の聖地であるのです。
先日、そんな瓢箪山稲荷神社の神饌畑で、ひょうたんが育っている!というビッグニュースが飛び込んできました。
発信元は、神社自身が発信されているfacebook。なので間違いはありません。しかし、私は境内にそのような畑があったということに今までまったく気がついていませんでした。なんという不覚!ということで、実のなっているところをこの目で見せていただかねばなるまい!と、さっそく出かけてまいりました。
近鉄電車を降りて、商店街を南へ。一の鳥居には、今年もひょうたんをかたどった「夏まつり」の看板が出ていました。朱色の二の鳥居を過ぎ、石造りの三の鳥居の奥に本殿があります。その手前には、夏越しの大祓の茅の輪が設置されていました。(写真①②③)
こちらの茅の輪は、おそらく全国でも類のない、ひょうたん型をしています。大きな輪の上に小さな輪が見えますよね?こんなところにまでひょうたん型。本当にうれしくなります。
私は茅の輪をくぐって無病息災をお祈りし、続いて本殿にお参りしました。「来年はベランダでひょうたん栽培が再開できますように」。そして、「ひょうたん音楽活動が続けられますように」。
お参り後は、もともと古墳の上に建てられたという本殿の周囲の小山を一巡りし、境内を端から端まで歩いて探しました。
しかし、やはりそれらしき畑は見当たりません。
社務所に行ってみると、ちょうどその時に宮司さんが帰ってこられました。私はfacebookの書き込みを見せていただいたことを話しました。
「ひょうたん実っていますよ。境内ではあるのですが一般公開していないところに植えてるんです」と、宮司さん。
「見せていただけないでしょうか?」とお願いすると、「いいですよ」と笑顔でご快諾くださいました。
神饌畑では神様にお供えする野菜や米を育てておられるそうで、お参り後にお願いすれば一般の人も見せていただくことができるそうです。私は宮司さんの後について、畑に入らせてもらいました。
畑では、トマト、キュウリ、ナス、イチジクなどが実をつけていました。いろいろな種類の花木のほか、米も植えられています。ひょうたんの棚もその一画にありました。
見ると、30センチほどもある見事なひょうたんが真ん中にぶら下がっています。口部が長く、プロポーションのいいひょうたん型。緑色のボディの全体に白い不規則な斑が入っています。棚の上の方にも成長中の実ができていて、こちらにも斑が入っていました。(写真⑤⑥)
「どういう品種ですか?」と尋ねると、宮司さんは「人にいただいて植えたんですが、ひょうたんを栽培したのは今年初めてで、詳しいことはわからないんです」とおっしゃいます。
畑の別の場所には、10センチ未満の小さな実がつき、今夜にでも咲きそうな花がたくさんついている苗も並んでいました。「こちらは千成ひょうたんです」と、宮司さん。千成ひょうたんが植えられている場所はフェンスの際で、神社を出て道路側から鑑賞することもできると教えてくださいました。(写真⑦)
私は宮司さんにお礼を言いながら、聖地でひょうたん栽培が始まったことを本当にうれしく思いました。逆に、今までひょうたんを栽培されたことがなかったというのは意外でしたが、もしかしたらこれから毎年栽培を始められるのかもしれない。そんな予感も少しして、思わず胸が高鳴りました。
畑を出て、門に掲げられた表札の下を見ると、「瓢千流」という文字が読めました。そう、この「瓢千流」という名も他では見たことがなく、以前から気になっていたのです。(写真⑧)
「お花の流派です。もう今は教えられる者がいないんですが……」と、宮司さんはおっしゃいました。神社では月に一度、生け花教室を開催されているそうですが、その先生は「瓢千流」とは別の流派の方だそうです。
「瓢千流」が今も続いていたら、習ってみたかったな。私の脳裏には、ひょうたんを花材に使った風雅な生け花作品が、次々に浮かんでは消えました。
(1202日目∞ 7月17日)