6月3日|でれろん暮らし|その194「練習と準備のためのリハビリ」 by 奥田亮

いつまでも弾いていたい感じ…何だか新しい動きが始まりそうですよ。

by 奥田亮

ボロンを弾く愛拓(アイタ)さん(右)と《巌窟王》の合奏。ボロンに用いたツキノワグマの皮は毛がふさふさ。

愛拓さんの熊ンゴニと、《瓢立琴》との合奏。

5月31日(金)は、「俺の縄文・番外編〜ひょうたん音楽公開リハ(ビリ)」を開催しました。6月以降続くライブや演奏の練習と準備のためのリハビリという位置づけです。リハビリなので途中でやり直したり、失敗したり、うまくいかずにわちゃわちゃしたりしてもオッケーというつもりだったので無料のイベントにしたのでした。お客さんが来てくださるのかどうか、全くわかりませんし、実際予約は1件も入っておりませんでした。

そんなライブに、楽器を自作する若き天才、愛拓(アイタ)さんが来てくれるという連絡がありました。ならば自作楽器を持ってきてもらってゲストとして参加してもらえないかと打診してみたら、二つ返事で快諾してくれました。

愛拓さんは、昨春ここ「でれろん暮らし」でご紹介させていただいた時から、ひょうたんでギロやビリンバウ、シェケレなどパーカッション系の楽器を自作していたのですが、その後、木曽にある長野県上松技術専門校に入学、本格的な家具製作、木工技術を習得。さらに在校時に猟師と知り合い、有害駆除などで捕獲されたツキノワグマ、イノシシの解体方法を学んだという強者。そこで習得した木工と皮の技術を楽器制作に注ぎ込み、自らなめしたツキノワグマの皮を使って、ンゴニやボロンといった西アフリカの弦楽器などを自作しているのでした。

「『命の再利用』と『地産地消』をテーマに、地元の木、皮を用いた民族楽器の製作を行う」のが彼の信条ということです。なので、車にひかれたタヌキなどの野生動物を見つけると持ち帰ってさばき、皮をいろんなものに利用しているのだそうです。この日もタヌキのマフラーやカエルのキーホルダーなどを見せてくれました。うーん、ダメな人はダメかもしれませんが。

右から時計回りに、タヌキ、テン、カワハギ、カエル(撮影:3点とも中島敏子)

ただ、ひょうたんについては、誰かにもらったり、どこかで購入したりしてるようだったので、以前から栽培をおすすめしていたのです。畑はあるとのことだったので、大寿と百成の苗を一つずつ謹呈。うまく育てば来年は、100%自家製の楽器ができるかもしれません。

さて、肝心のライブは、幸いお客さまも来てくださり、ありがたいことによい気分だからと投げ銭を置いていってくださる方もおられました。ただ、私はといえば、けっこう事前に練習したのに、本番になると配線がうまくいってないのか音が出なかったり、必要なものをステージに持ってきてなかったり、エフェクターの電池が切れたりとダメダメの連発。その都度愛拓さんに登場してもらって場を繋いでもらいました。いや、ほんとに助かりました。愛拓さんの熊ンゴニ(熊皮のンゴニ)と私の《瓢立琴》で即興合奏などもやってみました。楽器の音色も感覚も気持ちよいフィット感があっていつまでも弾いていたい感じ。

これはぜひバンドをやりたい。何だか新しい動きが始まりそうですよ。でれろん。

(1184日目∞ 6月3日)

これまでの『でれろん暮らし』はこちら

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓