アンテナにはひょうたんがよく似合う
by 丸黄うりほ
⑤山崎明さんが演奏するベトナム民謡「美しい竹」
まずは写真①をご覧ください。2023年ヒョータニストのお一人であるフェイ・ターンさん(左)と、片山トミオさんによるユニット「Electric travelers」の神戸big appleでのライブのようすです。
フェイさんが演奏している楽器は、電子楽器テルミンです。箱のような形をしていて、アンテナがにゅっと立っていますね。そして、どうかみなさんアンテナの先っぽを凝視してください……!
ひょうたんが!
誤解を招かないようにここで補足説明しておきますが、普通のテルミンにはひょうたんは付きません。現在、フェイさんはステージでテルミンを演奏するときに、写真②のひょうたんをアンテナに付けておられるようです。①のひょうたんに顔がついて、さらに進化を遂げているんですね。
アンテナにひょうたんをくっつけると、なにか楽器の奏でる音に変化があったりするのでしょうか?
……と、私は大変期待したのですが、残念なことに、ひょうたんを付けても音には何ら変化がないそうです。
では、なぜフェイさんはひょうたんを付けて演奏しているのかというと、それはすべてビジュアルのため。確かに、ひょうたんを付けただけでビジュアルは100倍くらいキュートになりました。アンテナにはひょうたんがよく似合います!!(断言)
その揺るぎない例をもう一つ、みなさまに見ていただこうと思います。
写真③は、ミュージシャンの山崎明さんのご自宅。この中に楽器が写っています、探してくださいね……。といっても、どこに楽器が?という方もおられるのでは。
それでは、ひょうたんを探してみてください。そうです、半分に切ったようなひょうたん型が、アンテナのような棒に刺さっているのが見つかりましたよね?
これは、ベトナムのダンバウという楽器です。箱に弦が1本だけ張られ、右手で弦を弾き、左手でひょうたんの刺さった棒をおさえて弦の張力を変えて演奏します。もともとは箱の部分が竹で出来ていて、棒には音を響かせるために本物のひょうたんが使われていたそうです。
そもそもダンバウのバウはひょうたんという意味らしい。現代のダンバウでは、この部分は木やプラスチックでできているようなのですが、今もひょうたん楽器のアイデンティティとしてこの形が残されているのだと思います。
山崎さんがダンバウの練習を始めたということで、写真③をSNSにアップされていたのは昨年6月のことでした。ところが、その3カ月後の9月にアップされた写真では、ダンバウの様子に変化が……?
写真④を見ると、プラスチックだったひょうたんが、なんと本物のひょうたんに変わっているではありませんか!
山崎さんによると、「プラスチックのひょうたんが割れてしまったので、フェイさんにもらった美瓢を飾りに使わせてもらっています」とのこと。フェイさんが育てた千成ひょうたんが、ここでもアンテナをより魅力的に演出していたのです!
天然のひょうたんに付け替えたことによって、山崎さんのダンバウは、世界に一つしかない「山崎さんのダンバウ」になったのだと思います。
ということで、先月SNSにアップされていた演奏をどうぞみなさんもお聞きください(動画⑤)。シンセサイザー moog Subharmonicon のドローンに合わせて、ダンバウで奏でられる曲は、ベトナム・クアンホーの民謡「美しい竹」です。竹とひょうたんが織りなす緑世界が目に浮かんでくるような、素敵な演奏にうっとり。
(1152日目∞ 3月7日)
※次回1153日目は奥田亮「でれろん暮らし」3月11日(月)にアップ。
1154日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、3月13日(火)にアップします。