トラヤヌスの大きな実は、加工もなかなか難儀

by 丸黄うりほ

①オオナガユウガオ「トラヤヌス」の穴あけ

②この白い果肉を干すと、かんぴょうになるのか……

③かたくて、ドリルがなかなか実に入っていきません!

④穴あけ作業だけで、もうへとへと

⑤「トラヤヌス4号」「5号」「6号」はゴミ箱で水浸け

⑥実に穴をあけて洗濯ネットに入れ、水を注ぎ入れました

⑦「トラヤヌス1号」と「3号」は衣装ケースで水浸け

⑧水を入れたバケツを重石にして、これでいけるかな?

ひょうたんには、わずか3センチの実をつける「一寸豆ひょうたん」から、人の身長を超えるほど大きな実がなるものまで、さまざまな品種があります。実のサイズが大きくなるに従って栽培は難しくなります。そして、大きくなるほど収穫後の加工も、いろいろと大変。

アフリカのように乾燥した土地では、大きなひょうたんでも放置しておくと勝手に中身がカラカラに乾くそうです。うらやましい。

日本など湿度の高い土地ではそうはいきません。放っておくと全体にカビが生え、皮ごと腐ってしまいます。なので、本邦ではひょうたんに穴を開けて水に浸け、中身を腐らせて外皮だけを残し、干して乾燥させるという工程を踏むのがスタンダード。大きな実は重く、水浸け容器も大きなものが必要で、2メートルを超えるようなひょうたんの場合は数人がかりで運び、池(!)に浸けて処置をするそうです。

今年、我が家のベランダで育ったオオナガユウガオも、2メートルとはいいませんが、60センチの大物。私にとってはこれまでに経験したことがないサイズです。

私は、比較的小さいものから手をつけようと、「トラヤヌス6号」「5号」あたりから穴あけの作業を行うことにしました。

穴のサイズは、タネの大きさにあわせます。千成ひょうたんで直径8ミリ、百成ひょうたんで1センチ。今回は2センチにしようと決め、まず1センチのドリルで開けてから2センチのドリルを使って穴を広げていくという戦法をとりました。

しかし、これが……、か、かたいっ!

ドリルがなかなか実に入っていかず、きゅるきゅると音を立てて空回りしてしまうのです。ドリルの先を押し付けて、ちょっとずつ削るようにしましたが、なかなか進まない。いつの間にか腕に力が入って、冬だというのに汗が吹き出てきました。

大きなひょうたんほど皮が厚いのはわかっていましたが、オオナガユウガオがこれほど手強いとは想像以上です。二つほど開けたところでかなり疲れてしまいました。(写真①)

おそらく、ドリルの馬力が足らないんだな……。

作業中、ドリルの先が外皮を突き破った瞬間に、手はふわっと軽くなります。そのままドリルを進めていくと、中から白い果肉がズルズルと出てきます。これを伸ばして乾かすとかんぴょうになるのだな……。(写真②)

……そんなことを考えつつ、「あと2個!」と頑張って、「トラヤヌス4号」と「3号」の口部にも同じような穴を開けました。

最後に残したのが、いちばん大きな実「トラヤヌス1号」です。

この実はお尻の部分がコンクリートに押し付けられていたため平らになっていて、しかもそこにカビが生えてしまいました。口部はとてもきれいなので、そこを残してやり、お尻の方に穴を開けることに決めました。しかし、お尻の中心点はものすごくかたそうです。

というわけで、中心から少しずれた位置に穴を開けることにしたのですが、それでもかたい!(写真③)ようやく穴が開いたときには、私はもうヘトヘトに疲れきっていました。(写真④)

しかし……、ここで中断して放り出すわけにもいきません。「きょう中にこれをやってしまうのだー!」と心にハッパをかけまして、残りの作業をやりきりました。

いつも使っている「丸黄式ひょうたん水浸けゴミ箱システム」には、比較的小さめの「トラヤヌス4号」「5号」「6号」の3個を入れるとちょうどよい容量です。3個の実を洗濯ネットに入れて、上にぴったりサイズのカゴを取り付け、コンクリートブロックを2つ置いて、風呂場でお湯をじゃーっと注ぎ入れました。(写真⑤⑥)

「トラヤヌス1号」と「3号」のほうも、洗濯ネットに入れて、ベランダの端に用意した衣装ケースの中に横たえました。(写真⑦)

我が家のベランダには水道栓がないので、バケツリレーで風呂場から水をよいしょよいしょと運び、ケースの中にどんどん注ぎ入れました。衣装ケースいっぱいまで水が入ったら蓋をして、上に水を入れたバケツを2個おいて重石にしました。(写真⑧)

これで大丈夫かな? ようやく、ひとまず終わりました。本当に大きいひょうたんは大変ですね。半端なく疲れました。

このサイズでひーひー言ってる私ですが、ふと思いました。全日本愛瓢会の展示で見かけたような特大ひょうたんは、収穫後の加工もものすごく大変なんだろうなぁ。大きなひょうたんの愛好家に男性が多いのは、体力の差もあるかもしれません。

この先に待ち構えている中身の振り出しも、なかなかの地獄になりそうな予感です。さて、どうなりますことやら。

(1110日目∞ 12月1日)

  • 丸黄うりほ ライター・編集者。ひょうたんをタネから育て、その実から音の出るものを自作し、演奏する楽団「ヒョウタン総合研究所」立ち上げ所員。ソロで「オール電化ひょうたん」としても活動中。ひょうたん栽培歴は15年ほどになるが、畑がないので毎年マンション(大阪市北区)のベランダでプランター栽培している。「花形文化通信」では、ほかにインタビュー記事を担当。
  • 2023年度ヒョータニスト(ひょうたん栽培&加工に挑戦中のみなさん) フェイ・ターンさん(瓢箪山)、ヤマミーさん(和泉市)、おーさきさん(小野市)、ヒロミさん(淡路島)、コンさん(吹田市)、イハリコさん(吹田市)、かよさん(瓢箪山)、杉浦こずえさん(大阪市/安城市)、たみさん(守口市)、いっさん(西宮市)、中野由紀昌さん(福岡市)、西山朝子さん(大阪市)、塚村編集長、KFさん(東大阪市)、しまじろうさん(大阪市)、坂本真理さん(国分寺市)、友清さん(姫路市)※順次追加していきます。

※次回1111日目は奥田亮「でれろん暮らし」12月4日(月)にアップ。

1112日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、12月5日(火)にアップします。