野村さんと出会った35年前に立ち返ってみようと思い立ちました
by 奥田亮
10月23日(月)は、スワロー亭で音楽家、野村誠さんのライブを開催しました。野村さんは “越境する音楽家” と称されることもあり、なかなか「こういう人」と一言で説明するのが難しいアーティスト。かつてNHK Eテレ「あいのて」に出演していたことをご存知の方もおられるでしょうか。ちょっとマニアックな音楽に興味がある方なら90年代のバンドpou-fouの人として覚えておられるかもしれません。現在巡回中の絵本作家、荒井良二さんの展覧会「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」(12/17まで千葉市美術館で開催)では、会場に流れる音楽を担当されているそうです。野村さんのこれまでの活動の全貌(の一部?)を知りたい方は、ぜひ『音楽の未来を作曲する』(晶文社)をお読みください。
さて、19時に始まったライブは、まずは野村さんのピアノ演奏から。約30分、ノンストップでくり広げられる即興演奏は、車窓から眺める風景のように次々と展開し、聞き飽きることがありません。途中、小さなお子さまがむずがったりする声も包み込むように音楽に取り込まれていき、幸福感あふれる音世界が展開していきました。
短い休憩後は、奥田(ひょうたん楽器、他)と、川村浩司さん(ノイズ、他)を交えての即興演奏。川村さんは、隣町の須坂市でお弁当やお惣菜のお店「おやつとごはんの店 ai」をご夫婦で営まれている方ですが、ギターやミニキーボードなどを使ってノイズミュージックを演奏されていて、私も何度か一緒に演奏したことがある音楽仲間。出会ったのはこちらに移住してからですが、なんと2000年に名古屋で開催された「野村誠としょうぎ作曲まつり」に、まだ学生だった川村さんが参加されていたことがわかり、今回23年ぶりの3人での共演と相成ったのでした。川村さんはその時、自転車のベルをたくさん枝に括り付けた自家製楽器で参加されており、野村さんは「川村自転車」と命名してずっと覚えていたのでした。
今回私は、野村さんと出会った35年前に立ち返ってみようと思い立ちました。当時はまだひょうたん栽培をしておらず、おもちゃや日用品で演奏したりしていて、それらを入れた缶をいまだに後生大事に持っていたことを思い出したのでした。即興性を高めるために、その缶は本番まで開けないようにして、いよいよの始まりに開けたら、なんと自転車のベルが入っていました。これは奇遇!
当然、自転車のベルの演奏から始めることにしました。当時編み出した独自の奏法で「チーン、カチ、チーン、カチ」と静かに音が鳴り始めると野村さんが小さな音でピアノを弾き、そこに川村さんの電子音のノイズが重なります。ああ、何かわからないけどいい感じ。この流れに乗ればうまくいきそうです。その後私はひょうたん楽器をいくつか持ち替えて演奏。野村さんはピアノを中心に、鍵ハモ、椅子、果ては突然ピアノを動かし始め、何をするのかと思ったらピアノの裏を叩いたり。川村さんは受験勉強する高校生のように、一人机に向かって繊細なノイズやラジオを奏でます。そろそろ終盤に向けて締めていこうと舞台の照明を消していったところで、突然川村さんがラップを歌い始めてビックリ。その流れに乗りつつ、最後は静かに着地して約30分の演奏が終わりました。
私にとっても久しぶりの演奏の機会となり、楽しうございました。ひょうたん以前の楽器(?)を演奏するのは何年ぶりだろう…。これからはひょうたんだけにこだわらずにいろいろ音を出していこうと改めて思った次第でありました。でれろん。
(1088日目∞ 10月30日)