ヒョウタンはどうして周りを硬くしてタネがこぼれないようにしているのだろうか?

by 奥田亮

水から出してみた百成

水面から出ていた部分が黒くなってしまった。これもご愛敬

無残に朽ち果て腐敗していくIPU。餓鬼草子

スワロー亭の新入荷情報をインスタグラムにあげると、お取り置きしてくださいとご連絡をいただくことがあります。先日ご連絡いただいた方は、ご来店は初めてだったのですが、とあるイベントに出店したおりに一緒に並べていたひょうたんをお買い求めくださった方だとわかりました。あれま、またこんなところにも瓢縁が!

その方はその後、自らも栽培されたそうですが、使い道がわからずにおられました。栽培されたのは百成のようでしたので、こんなのもありますよとひょうたんアクセサリーをお見せしたら、あー、こんな小さなのもあるんですね、来年はこの種でやってみようかな、という話に。知らず知らずのうちにひょうたん文化圏が広がっているのかもしれません。

さて、寒さもあってなかなかズクが出ないのですが、先日思い切って水づけひょうたんを水から出してみました。百成は割と中身が出たようですが、やはり気温が上がらなくて、IPUは表皮もまだ緑色でなかなか腐敗にまで至っていないようです。ちょっと中身を振り出してから、もう一度水につけ直しました。

発育不全のまま収穫したIPU、UFO、アメリカ瓢は、そのまま放置。IPUとアメリカ瓢は、グッシャリとつぶれて未熟なタネがこぼれ出しています。まるで平安時代の地獄草子か餓鬼草子に出てきそうです。ああ、この世は儚きものであります。じっと見ていると一つ疑問が湧いてきました。「ヒョウタンはどうして周りを硬くしてタネがこぼれないようにしているのだろうか?」

植物の生存戦略にすれば、実が完熟すると、鳥が食べてタネを糞と一緒に落とすとか、地面に落ちてタネがこぼれるとかしてそこから新しい芽が出るという方法を取るんじゃないかと思うのですが、表皮が硬いとそのどちらも難しく、人為的に取り出さないと次につながらないように思います。すでに栽培種しか残っていないといわれるヒョウタンなので、人が関わることを前提に成長しているということでしょうか。

そこで思い出したのは、イネのことでした。イネは熟してもそのままではタネ(籾米)が落ちません。落ちないから人間が収穫して食料にできるわけですが、本来なら自然に落ちてそこからまた芽を出すべきところです。これはもともと障害のあるイネで、その障害のある変異種を見つけて育てていったのが今あるイネなのだそうです。人は障害のあるイネのおかげで食料を手に入れることができ、イネは人の手を借りないと生存できないという共存関係が成り立っているわけです。

もしかしたらヒョウタンも、もともとヘチマのような表皮の柔らかい瓜の中に、たまたま硬いのが現れ、これは器に便利じゃないかということでその変異種を育てていったのではないか、という仮説を立ててみました。

そもそもなんでくびれているのかというのも疑問なんですが、くびれのあるヒョウタンは中国由来の種がそうなのであって、アフリカやアメリカやハワイのヒョウタンはくびれていません。もしかしたら中国で出目金を作るみたいにくびれのあるヒョウタンを作ったのかも?と妄想したのですが、甲骨文字の時代からくびれたヒョウタンが図(字)になっていることを考えると、そうでもないのかもしれません。

どうなんでしょうね。研究している先生とかおられないでしょうかね、でれろん。

(657日目∞ 12月13日)

参考文献:『障害をしゃべろう!〜『コトノネ』が考えた、障害と福祉のこと(下巻)』(青土社)p221 稲垣栄洋「弱い雑草の「戦わない強さ』」